たん焼 忍
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四谷「たん焼 忍」で知る牛たんの奥深さ。珠玉の三品「ゆで・焼き・シチュー」を巡る口福体験
東京、四谷。大通りから一本入った三栄町の路地に、食通たちの心を掴んで離さない一軒のお店が静かに灯りをともしています。その名は「たん焼 忍」。

牛たん料理、と聞くと、どのような一皿を思い浮かべるでしょうか。炭火で香ばしく焼かれたもの、あるいはじっくり煮込まれたシチューかもしれません。このお店は、そんな牛たんの既成概念を鮮やかに塗り替えてくれる場所。

半世紀近い歴史を持つとも言われるこの専門店では、「ゆでたん」「焼きたん」「たんシチュー」という、牛たんのポテンシャルを最大限に引き出した三つの柱を中心に、訪れる人々を魅了し続けています。

この記事では、四谷の夜に確かな存在感を放つ「たん焼 忍」の扉を開け、その奥深い魅力に迫ります。一口食べれば誰もが「なるほど」と頷く、本物の味を求めて足を運んでみました。

 

お店の基本情報

店名: たん焼 忍(たんやき しのぶ)
住所: 〒160-0008 東京都新宿区四谷三栄町14−4 松啓ビル 1F
アクセス:

JR中央線・総武線「四ツ谷駅」より徒歩約7分
東京メトロ丸ノ内線「四谷三丁目駅」より徒歩約7分
ウェブサイト: http://tanyakishinobu.com/
営業時間(目安):

[月~金] 17:00~22:30頃
[土] 16:00~22:20頃
※予約は平日の早い時間帯(17:00~18:00)のみ可能な場合があるようです。土曜日は時間制となることもあるため、訪問前にお電話で確認されることをおすすめします。
定休日: 日曜日・祝日

路地裏の名店、その魅力と空間

お店は、まさに「知る人ぞ知る」といった趣のある場所にあります。店内はこぢんまりとしており、カウンター席と、奥には低い木製テーブルと丸太の椅子が並ぶ座敷が。

決して広くはありませんが、その分、厨房の活気や他のお客さんの楽しそうな声が心地よいBGMとなり、独特の一体感を生み出しています。人気店ゆえに、混雑時には相席となることも多いそうですが、それもまたこのお店の醍醐味。クリアボードでの仕切りなども配慮されており、美味しい料理を前にすれば、自然と和やかな空気に包まれます。

メニューを拝見すると、驚くのはその潔さ。牛たんを中心とした料理が並び、その一品一品に専門店としての矜持が感じられます。価格帯は、一皿1,000円台後半が中心。決して安価ではありませんが、後述する料理のクオリティを体験すれば、誰もがその価値に納得するはず。むしろ「この仕事でこの価格は」と驚かされる、真の意味でのコストパフォーマンスの高さを秘めています。

 

実食レビュー:牛たんの新たな境地

このお店を訪れたなら、必ず味わうべき三品があります。

「ゆでたん」「焼きたん」「たんシチュー」。

これらは、牛たんという食材の可能性を、異なる角度から見事に表現しています。

 

息をのむ柔らかさ【ゆでたん】

注文して驚くのが、その提供スピード。お店の看板メニューである【ゆでたん】は、まるで待っていたかのように、すぐにテーブルへ運ばれてきます。

透き通った琥珀色のスープに浸かった、大ぶりなたん。見た目はシンプルですが、その一切れに箸を入れた瞬間、衝撃が走ります。抵抗なく、すっと箸が通るのです。

口に運ぶと、ぷるんとした舌触りの後、繊維がほろほろと解けていく……。これは「柔らかい」という言葉では表現しきれない、未体験の食感です。じっくりと時間をかけて仕込まれ、余分な脂は落ち、旨味だけが凝縮されています。

スープは、たんの出汁が溶け出した滋味深い味わい。添えられた辛子を少しだけつけていただくと、その風味がたんの甘みを一層引き立てます。これほどまでに素材の良さと丁寧な仕事を感じさせる一皿に出会うと、思わず背筋が伸びるようです。

 

炭火が引き出す力強さ【焼きたん】

次にいただくのは【焼きたん】。

こちらは「ゆでたん」とは対照的に、炭火の力強さをまとった一品です。

運ばれてきた瞬間に広がる、香ばしい香り。表面はカリッと焼き上げられ、美しい焼き色が食欲をそそります。しかし、その真価は噛みしめた瞬間にこそあります。

サクッとした歯切れの良い表面の奥から現れるのは、しっとりとして弾力のある中心部。噛むほどに、閉じ込められていた肉汁がじゅわっと溢れ出し、炭火の香りと一体となって口の中を満たします。

一般的な焼肉店のたん焼きとは一線を画す、絶妙な火入れ。厚切りでありながら、この食感のコントラストを生み出す技術は、まさに職人技と言えるでしょう。

 

深いコクと、とろける余韻【たんシチュー】

洋食の定番でもあるシチューも、「忍」の手にかかれば唯一無二の存在感を放ちます。

熱々の土鍋で提供される【たんシチュー】は、見た目にも濃厚。

スプーンですくうと、そこには形を保つのがやっとなくらいにトロトロになったたんが。デミグラスソースは、重すぎず、しかし深いコクがあり、たんの旨味と完璧に調和しています。

バケットが添えられてくるのも嬉しい心遣い。このソースを一滴も残したくない、そう思わせるほどの完成度です。煮込まれることで、また新たな魅力を開花させた牛たんに、その懐の深さを改めて感じさせられます。

 

脇を固める、珠玉のサイドメニュー

主役の三品はもちろんですが、「忍」の魅力はそれだけではありません。

「塩漬けたん」は、まるで上質なハムのようなしっとりとした舌触りと凝縮された旨味が楽しめますし、「セロリ梅干し煮」は、その意外な組み合わせと爽やかな酸味で、箸休めに最適と評判です。

締めには、「たん雑炊」や「たんスープ」と「焼きおにぎり」を。

特に炭火で焼かれた香ばしい焼きおにぎりと、たの旨味が溶け出したあっさりとしたスープの相性は抜群。最後の最後まで、たんの恵みを余すところなく堪能できます。

 

まとめ:本物を知る喜びが、ここにある

「たん焼 忍」は、ただ「美味しい牛たんが食べられる店」という言葉だけでは語り尽くせない場所でした。

一つの食材を深く見つめ、ゆでる、焼く、煮込むという異なる調理法で、その魅力を最大限に引き出す。そこには、長年培われてきたであろう技術と、食に対する真摯な姿勢が垣間見えます。

お店の雰囲気は気取らず、活気があり、とても居心地が良いものです。でも、出てくる料理はどれも一級品。こういうお店を知っていると、日々の暮らしが少し豊かになる気がします。

特に「ゆでたん」の食感は、単なる柔らかさではなく、丁寧な仕事が透けて見えるような繊細さがありました。美味しい、の先にある「なるほど」という知的な満足感。それこそが、多くの人がこの店に惹きつけられる理由なのかもしれません。
本当に美味しいものを、気取らない空間で楽しみたい。

そんな本質を求める大人たちにこそ、訪れてほしい名店です。四谷の夜、この「忍」でしか出会えない牛たんの奥深い世界に、ぜひ触れてみてください。

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